Valves' World 番外編その48
LUX KMQ60 改修例

 70年代に手頃な価格と詳しいマニュアル完備で自作ファンの間で 大ヒットしたLUXのKMQ60で、過去に挑戦された方も多いのではないでしょうか。 今回ご依頼いただいた大阪・豊中市のYさんもそんなお一人でした。
 青春時代の想い出がこもった愛着のあるアンプ、でもさすがよる年波には逆らえず、 あちこち不具合も出てきました。もともと出力管50CA10を目一杯 働かせて30Wを搾り出す設計ですから無理もありません。
 そこでこの先安心して使えるよう設計変更のご依頼を受けました。 ただ愛着のあるアンプですから、元の雰囲気はできるだけ残すよう心がけてみました。  


 さて改修なったKMQ60アンプが、 下の写真です。

 まずシャーシは全面的に作り替えましたが、いわゆるLUXスタイルの部品配置は元のまま、 ただし前後に大きくサイズを広げて、前面の電源スイッチや入力VOL、 後面の入出力端子などをそれぞれ上面に配置、使いやすくしましたし、 当然当工房特製のウッドケース仕様です。 もちろん当時オプションで購入されたボンネットも使えるようにしましたが、 シャーシのシャンパンゴールドに合わせてチョコレートブラウンに 再塗装してあります。

 前方スペースは、中央に電源スイッチ、その左右に 入力VOLとしました。パイロットランプはいつものように、 前面当工房エンブレムの真空管マークがが光るタイプです。
 

 元々後部スピーカー端子はインピーダンス切替で一系統だけでしたが、 切替スイッチを排し、4−8−16Ωすべて対応できるよう、 使いやすい大型端子を並べてあります。電源コードも一般的な 3Pプラグが使えるようインレットを設けました。

 回路は全面的に見直してありますので、シャーシ内に元から付いていた パーツの再利用はほとんどありません。せいぜいトランス類、真空管ソケット くらいのものです。


基本回路図

 回路は以前発表したことがある、同じKMQ60の改修例に準じていますが、 今回はさらに余裕を持たせるため、電圧・電流とも抑え気味です。
 初段と位相反転は元から付いていた真空管を活かすため、 6AQ8を使ったPK分割としましたが、ここは前作のように6DJ8とするのも一法です。
 出力段はいつもどおり、A級PP、セルフバイアス動作で、 今回は1本あたり60mA強とかなり控え目です。
 電源部は元のトランスとチョークを活用して、チョークインプット方式にしていますが、 心配したチョークの唸りは検知できません。 これでA級PP用の適正電圧が得られますし、電流も巻線の1.4倍ほど取れますから かなり余裕ができました。

測定結果

当工房のアンプはすべて詳細な測定を実施しております。 データで音がわかるわけでもありませんし、物理特性を 追求するアンプでもありませんが、お渡しするアンプの 健康状態だけは把握しておきたいと思っています。

基本性能

出力 8W+8W 所要入力 1300mV
    全高調波歪率 0.7%以下(1KHz 1W時)
再生周波数帯域 5Hz〜50KHz
ダンピングファクター 5.5
残留ノイズ 0.6mV以下

消費電力 128W
本体サイズ 440Wx280Dx190H
重さ 14KG

  入出力特性

出力対歪率特性

周波数特性

ユーザーレポート

ユーザーからのメールによる評価です。
(ご本人の許可を得て掲載しております)
 見た目もすっきりとし、木目も美しくワイフも喜んでいます。

 部品も新しくして頂き、余裕のある回路に換えて頂いたので、 長く安心して使って行けるようになったのは有難いことです。 ノイズがなくなりひとつひとつの音もクリアになったような気がします、 きっと前のは老衰状態になっていたのだと思いました。

 ジャズのフルバンドを主に聴いてみましたが、間違いなくワンランク上の音になっています。 音が整然としていてうるさくないんです。 拍手の音なんか断然よくなったと感じました。  嬉しい限りです。感謝しています。

 昨日は新しいCDを1枚買って、急いで帰ってスイッチを入れました。 アンプの置き場所も変えて見ました。 スピーカーは昔サンスイが作ったSP505J(JBLのD123)に フォステクスのトィーターをつないだものだですが、 アンプの木目調とぴったり合って、全体が一層落ち着いた雰囲気になりました。 快調に鳴っています。

ウイークエンドには、 あわただしく結線したのでワイアがゴチャゴチャになっているのをやり直して、 一段落できると思っています。  

以上、Yさんからいただいたレポートでした。
 



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