Valves' World 番外編その24
自作アンプ改修例

 真空管アンプの自作は生まれて初めてというT氏が、無謀にも300Bパラシングルに挑戦、 某ショップのパーツキットでなんとか組上げたものの、ノイズはとれず、出力管のプレートは 赤熱、おまけにパチパチ異音も発するといった状態で持ち込まれてきました。 上の写真がそのアンプの内部の様子です。
(シャーシ上面の写真は、見る人が見れば出所が分ってしまい、いろいろ 不都合もあるかと思いますので割愛させていただきます)

 まずノイズは配線のやりかえでなんとかなると思いましたが、問題はプレートの赤熱と 異音の発生源究明です。いろいろ調べてみましたところ何とドライバートランスNC−14の ひとつに二次側導通がありません。外して内部を見てみると下の写真のように引き出し線が外れています。
 (引き出し線を端子にハンダ付けするさい 先を少し曲げて引っ掛けるようにしてあり、後からのハンダで線が外れないようにしてあるのですが、 今回の例では先が真っ直ぐのままでしたから中へ引き込まれてしまったようです。 これと同様のケースは過去にも経験がありますが、製造過程でのミスだと思います。 アマチュアレベルの人が使うパーツで、不良の発見は難しいですから 気をつけて欲しいところです。)

原因はこの部分の接触不良で出力管のグリッドが浮いた状態になり、発振してしまっていたようです。 おかげで300B2本は使用不能になっていました。トランスを修理、配線の手直しをして 組上げた状態が下の写真で、新しい300Bを装着して無事修理完了、ついでに底板が無かったので これも安全のためパンチングメタルで作成して付けておきました。

   大部分は元のパーツを流用しましたが一部再利用不可能なのものは新しいものに 取り替えています。電源スイッチ脇にあった高圧遅延スイッチは元々 83などの水銀整流管使用時のもので、現在は5U4Gに限定されおられるので 不要ですから、これを取り外して代わりにメーター感度切替用のロータリースイッチを 設けました。また300B用のフィラメント整流ダイオードブリッジは4個とも 電源トランス直近に配して配線が煩雑になるのを防いでいます。 300Bのカソード抵抗は出力トランス銘板の上に重なって浮いており十分な放熱が 出来ない状態でしたので、銘板をトランスとシャーシの間に移し改善しました。


 以下基本回路図と測定結果ですが、回路はオリジナルを尊重、
初段・ドライバーの動作点を調整、ドライバートランスは二次側シリーズに 変更して
ダンプ抵抗で6AH4の歪を調整二次歪打消し作用をさせるにとどめました。

 以上のように
出力 18W+18W 所要入力750mV
歪率 0.5%以下(1KHz1W時)
周波数特性 13Hz〜47Khz(−1dB)
ダンピングファクター 2.8
残量ノイズ 0.6mV
となり、パーツキットとしての設計性能を取戻しました。


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