いつもは惚れぼれするような、見事な内部配線を見せてくれる
某有名ガレージメーカーのアンプですが、
依頼者が特注したという今回は、なぜか手抜きが目立っていましたし、
中でも下の写真のような状態はいただけません。
グリッドが浮いてしまい300Bが発振、おかげでテスト稼動中に
一本オシャカにしてしまいました。 こういう失敗は手作業につきものですが、入念なチェックで防げるはずで、我々も 肝に銘じておきたいと思います。 (シャーシ上面の写真は、見る人が見れば出所が分ってしまい、いろいろ 不都合もあるかと思いますので割愛させていただきます)
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まずシャーシは全面的に作り替え、部品配置なども ご要望にしたがって再調整してみました。 |
トランス類は当然再利用しましたが、将来的に劣化の不安がある電源部の電解コンは オイルフィルムに変更、 同時にそれを漆調の深紅に塗装してアクセントをつけ、いつもの カリン材ウッドケースに収めました。 |
初段管横の小さなトグルスイッチは
ご要望でお付けした
NFBのON/OFF切替です。
トランス類は元のアンプについていたタムラ製ですが、 なぜかトップのシールがショップの名前になっていました。 依頼者はこれを剥がして当工房のシールをと所望されましたが、 うちが作ったトランスでもないものにそれは晴れがましすぎると思い、 ちょうどタムラさんのシールの余りがあったので貼っておきました。 |
左側中程の四角い大きなものは、依頼者が前ショップに
拘りでつけてもらったカップリングコンデンサーで、
せっかくですから今回はそのまま引き継ぎました。
ただ容量が0.0445と小さいため、グリッドリークは
330Kと大きくしています。でないと結合部の時定数が
小さすぎて低域レスポンスが悪化します。
本来はWEで自己バイアスの場合
250K以下と規制していますが、オリジナルの91Bアンプでも
390Kを使っているところをみると、実際面では
大丈夫なようです。 入力VOLとハムバランサーは共に貧弱でしたので 新しい容量の大きなものに替えてあります。またカソード抵抗も 30Wのホーロータイプが付いていましたが、 余りに場所をとりすぎますから、880Ωのメタルクラッドに 変更しました。 なぜか電源トランスの方だけ銘板が付いていませんでしたが、 これもうちに予備があったので付けておきました。 |
通常のWE91Bタイプと変わるところはありませんが、
初段付近の定数は717Aの動作に適切なものに決定してあります。 なお、いわゆるWE繋ぎと称される、出力管のグリッドに フィラメントハムの一部を注入して打消しを行う回路は、 優れた半導体整流と大容量コンデンサーが利用できる現在では、 余り意味を成しませんので採用していません。 |
残留ノイズは改修前・後とも1mV以下です。