Valves' World 番外編その11
LP再生専用プリアンプ

京都市のNさんからの依頼はレコード再生に特化したプリアンプの製作でした。
入力はPhono2系統のみ、とにかくシンプルで高音質のプリをという ご希望でしたが、
小音量時の音場補正として高低域に若干の 補強を施したいというご要望も加わり、
音の鮮度を失わない範囲での トーンコントロールを付加しました。

メインボリューム左の二つのツマミがTCで、
フラット状態から100Hzおよび10KHzを
それぞれ+3もしくは+6dB補強できます。

入力端子はPhono1と2のみ、感度は1.2mVとかなり高いですから、
あらゆるカートリッジに幅広く対応できます。
出力端子は 3系統並列出しですが、インピーダンスが1.5KΩと十分低いので
仮に受けインピーダンス100KΩのパワーアンプが3台つながっても 歪の増加は僅少です。
(1KHz入力3mV1V出力時20KΩ負荷実測値で0.02が0.04%に増加)

ケースはいつものように2.3mm厚のアルミチャンネルと アングル材などで組立てた
オリジナルで、サイズは400Wx260Dx120H (脚部および突起部をのぞく)
左3分の1が電源部、シールド板を隔てて
中央2列がフラットアンプと TC部、右2列がイコライザーです。

基本回路図

基本回路はいつものように各増幅管のカソードパスコンを 撤去する大電流小バイアス電圧の採用です。
バイアス電圧1V程度と通常の真空管使用法のセオリーからは外れていますが、
これこそが音の鮮度を失わずなおかつ低歪を実現できる回路で、
出力2〜5mVの標準的なカートリッジをつなぎ、定格出力1Vを得た場合
その歪は0.03%以下とNFイコライザー並みの低歪を実現しています。
また、NF型のようにクリップ直前で歪が急激に増えるという
弊害もありませんので、 過大入力に対しても音質を損なうことが少ないです。
CR型イコライザーで0.1%を切るのは難しいと諦めておられる方も あるようですが
ぜひ試してみてください。 とにかく出てくる音の鮮度、情報量が格段に違ってきます。
今回はフラットアンプのあとにTC回路を設けましたので もう1段送出しアンプが必要になり、
やや煩雑になりましたが この送出しアンプも同じ構成で仕上げており、
前回より バイアス抵抗を下げ電流も増やしましたので出力インピーダンスは さらに下がりました。
TC部の変化量は別図のように100Hz、10KHzでそれぞれ +3、+6dBとかなり控え目で、
派手さを狙ったものではなく、 あくまで小音量時の補強が目的ですし、
FLAT位置ではウネリのない平坦な特性が得られます。
なお回路図では書き込むスペースがなかったので TC部分が
Bass、TrebleともVRになっていますが、 実際には3接点のロータリーSWを使っています。

2006.06.26追記
ユーザーの方からその後ノイズに関してご指摘がありましたので 調査しましたところ、
増幅管6922の構造上の不具合に起因していることが 判明、
現在はすべての真空管を以前から使っている6DJ8に変更しています。
回路図の各定数、電圧配分などに変更はありませんがV1〜V3の6922はすべて6DJ8と読み替えてください。



基本性能

定格出力電圧  1V (最大出力13V)
歪率  0.1%以下(定格出力時1KHzにて)
入力感度 1.2mV  入力インピーダンス  47KΩ
トータルゲイン 58.4dB (831倍)
許容入力電圧(1KHz)
  歪率0.1%時 30mV
歪率1%時 250mV
歪率5%時 700mV
RIAA偏差 0.5dB以内
出力インピーダンス  1.5KΩ
残留ノイズ(入力端子は1KΩにてターミネイト)
 音量VOL.最大位置 補正なし 1.3mV
JIS−A補正 0.15mV 入力換算雑音電圧 −135dBV
      音量VOL.中点 補正なし 0.3mV
JIS−A補正 0.04mV 入力換算雑音電圧 −146dBV
   チャンネルセパレーション 74dB以上(1KHz)

測定結果


ユーザーレポート


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