京都市のNさんからの依頼はレコード再生に特化したプリアンプの製作でした。
入力はPhono2系統のみ、とにかくシンプルで高音質のプリをという
ご希望でしたが、
小音量時の音場補正として高低域に若干の
補強を施したいというご要望も加わり、
音の鮮度を失わない範囲での
トーンコントロールを付加しました。
メインボリューム左の二つのツマミがTCで、
フラット状態から100Hzおよび10KHzを
それぞれ+3もしくは+6dB補強できます。
入力端子はPhono1と2のみ、感度は1.2mVとかなり高いですから、
あらゆるカートリッジに幅広く対応できます。
出力端子は
3系統並列出しですが、インピーダンスが1.5KΩと十分低いので
仮に受けインピーダンス100KΩのパワーアンプが3台つながっても
歪の増加は僅少です。
(1KHz入力3mV1V出力時20KΩ負荷実測値で0.02が0.04%に増加)
ケースはいつものように2.3mm厚のアルミチャンネルと
アングル材などで組立てた
オリジナルで、サイズは400Wx260Dx120H
(脚部および突起部をのぞく)
左3分の1が電源部、シールド板を隔てて
中央2列がフラットアンプと
TC部、右2列がイコライザーです。
基本回路はいつものように各増幅管のカソードパスコンを
撤去する大電流小バイアス電圧の採用です。
バイアス電圧1V程度と通常の真空管使用法のセオリーからは外れていますが、
これこそが音の鮮度を失わずなおかつ低歪を実現できる回路で、
出力2〜5mVの標準的なカートリッジをつなぎ、定格出力1Vを得た場合
その歪は0.03%以下とNFイコライザー並みの低歪を実現しています。
また、NF型のようにクリップ直前で歪が急激に増えるという
弊害もありませんので、
過大入力に対しても音質を損なうことが少ないです。
CR型イコライザーで0.1%を切るのは難しいと諦めておられる方も
あるようですが
ぜひ試してみてください。
とにかく出てくる音の鮮度、情報量が格段に違ってきます。
今回はフラットアンプのあとにTC回路を設けましたので
もう1段送出しアンプが必要になり、
やや煩雑になりましたが
この送出しアンプも同じ構成で仕上げており、
前回より
バイアス抵抗を下げ電流も増やしましたので出力インピーダンスは
さらに下がりました。
TC部の変化量は別図のように100Hz、10KHzでそれぞれ
+3、+6dBとかなり控え目で、
派手さを狙ったものではなく、
あくまで小音量時の補強が目的ですし、
FLAT位置ではウネリのない平坦な特性が得られます。
なお回路図では書き込むスペースがなかったので
TC部分が
Bass、TrebleともVRになっていますが、
実際には3接点のロータリーSWを使っています。
2006.06.26追記
ユーザーの方からその後ノイズに関してご指摘がありましたので
調査しましたところ、
増幅管6922の構造上の不具合に起因していることが
判明、
現在はすべての真空管を以前から使っている6DJ8に変更しています。
回路図の各定数、電圧配分などに変更はありませんがV1〜V3の6922はすべて6DJ8と読み替えてください。