依頼者が入手されたアンプは使用部品その他から推測して、 元々は300Bpp、それを339Appに改造されたもののようでした。 どうも音が好みに合わなく、手持ちに350Aがあるので それに改造してくれないかというご相談でした。 |
出力トランスやドライバー、チョーク、前段構成などはそのままで、 シャーシも再利用ですから配置なども元のままです。 電源トランスのみ交換、出力管350Aに対応させました。 |
オリジナルの状態で特性などチェックしたあと、まずは 内部のパーツを一旦すべて取り外し、新たな回路を再構築してゆきます。 |
元のパーツで再利用できるものは極力使用しましたが、 ケミコンなど劣化の著しいものは新品に交換してあります。 |
まずは原機から書き出した回路図ですが、前段は310と336共に
三極管接続による2段増幅、P−P間を100KΩで繋いで
約6dBのNFBがかけてあります。 ドライバートランスは詳細が良く分りませんが 巻き数比1:0.5+0.5、適合インピーダンスは10KΩ程度でした。 これを339Appで受けていますが、この段は無帰還です。 出力トランスも詳細が不明ですが、2次側8−16Ωとして、 実測値はP−P間約6.5KΩと出ました。 |
前段の構成はそのままですが、NFBは336の内部抵抗が下がってしまい、
ドライバートランスとのマッチングが取れなくなってしまいますので外しました。
これで原機の周波数特性に見られるような高域の盛り上がりはなくなりました。 出力段は球が350Aに変わっただけで基本回路は変わりませんが、 5極管を無帰還で使うことはまず無理ですから、何らかの帰還方法を 考えねばなりません。一般的には出力トランス2次側から初段に戻す オーバーオールNFBでしょうが、この出力トランスとドライバートランスでは どう頑張っても安定なNFBをかけることは出来ません。 そこで出力管350AのみにP−Gの局部帰還をかけ、内部抵抗を下げて 3極管並の特性を得ています。350Aを3極管接続という方法も ありますが、得られる出力は激減してしまいます。 P−G帰還ですとその弊害もありません。 ただしこれは前段との結合がトランスドライブであってこそ可能な手で、通常のCR結合では 出力管の入力インピーダンスが下がってしまうため、ドライブ段にとっては 負荷が重くなってしまい満足な結果は得られません。 またここに使うDCカット用のコンデンサーは低域まで十分な帰還量を得るために 少なくともこの程度の容量は必要です。 これをわざと小さくして低域を持ち上げるように工夫した昔の電蓄用アンプの例はありますが・・・。 なお出力段の設定はOPTのインピーダンスなどから、 A級PPが最適と判断、それに沿った定数としています。 |