Valves' World 番外編その49
メーカーアンプ改修例その2


 西東京市のKさんがアメリカ駐在時代に購入された6L6のシングルアンプです。 コンパクトにまとめられており、トーンコントロールなども装備してあるので 手軽に使えるアンプとして、帰国後も愛用されておられるようですが、 ノイズの多さやトーンコントロールの不具合などもあるため、 当方への改修依頼となりました。じつはご相談いただいたのが約1年前、 ずいぶんお待たせしてしまいましたが、このほどようやく完了しました。
(上3枚の写真はKさん提供です) 


 さて改修なったアンプが、 下の写真です。

 コンパクトな外観を活かすため、改造は後部のスピーカー端子交換と 内部配線だけにとどめました。

 回路は全面的に見直してありますので、今回もシャーシ内に元から付いていた パーツの再利用はほとんどありません。唯一拘りで付いていただろうと思われる SpragueのVitaminQのみ再利用しました。その他電解コンデンサーの類は 既に容量抜けの状態でしたので、すべて新しいものに交換してあります。
 本来現地の120V仕様ですが、100V電源そのままで十分な性能を 発揮できるよう設計してありますので、スピーカー端子の交換とあいまって、 コンパクトなデザインを活かした部屋から部屋への移動も便利になりました。
 なおご要望で、ヘッドフォン端子の追加をしましたが、 アンプ中央の空きスペースにジャックと切替スイッチを設置しました。


基本回路図

 元の回路は図面がありませんので不明ですが、12AX7 1本で トーンコントロールを構成していたことから推して、上図のようなものに しました。(現機の実配線を追ってゆけばある程度解明できたでしょうが、 写真のとおりとてもその気になれるものではありませんでした) ただこのように12AX7 1本で構成するには相当無理があり、 以下のように特性的におよそ満足できるものではありませんが、オリジナルのままよりは 数段向上しておりますし、通常の音楽再生で不具合を感じるものではありません。 なお出力管は写真のRCA6L6Gの他に中国製KT66、ロシア製5881などを 所有されておられますが、そのいずれもが無調整で差替え使用可能です。

測定結果

当工房のアンプはすべて詳細な測定を実施しております。 データで音がわかるわけでもありませんし、物理特性を 追求するアンプでもありませんが、お渡しするアンプの 健康状態だけは把握しておきたいと思っています。

基本性能

出力 3.5W+3.5W 所要入力 170mV
    全高調波歪率 3%以下(1KHz 1W時)
再生周波数帯域 20Hz〜35KHz
ダンピングファクター 3.8
残留ノイズ 1mV以下

消費電力 38W
本体サイズ 320Wx230Dx180H
重さ 8KG

ユーザーレポート

ユーザーからのメールによる評価です。
(ご本人の許可を得て掲載しております)
 本日午後、無事アンプを受け取りました。本当は昨日配達を受けたのですが、不在状態で、 今日、再配達してもらいました。

 今、横で元気に鳴っています。 一発目の印象は、静かになったこと、そして見透しが良くなったことです。山中様のオリジナル アンプ群と比較すると性能は劣るのでしょうが、とても好ましい感じです。 ヘッドホンジャックもまるで最初から付いていたような収まりの良さです。

 小さな音でBGM的に使用するときも結構あるので、トーンコントロールが役立ってくれていましたが、 その場合余計ノイズが気になっていましたが、その悩みもなくなりました。

 本当にお願いしてよかったと思います。ありがとうございました。

以上、Kさんからいただいたレポートでした。
 



ギャラリー本館へ

ギャラリー別館へ