Valves' World 番外編その38


直熱管CDバッファーアンプ

トランス式アッテネーター採用

 愛知県犬山市の I さんからの依頼で構想から約一年、 色々な事情で遅れておりました直熱管71A採用CDバッファーアンプようやくの 登場です。当初は番外編No.9あたりを想定していたのですが、まず入力アッテネーターに トランス式のがあるようだが、どうだろうかと相談を受け、いろいろ調べてみると かなり使えそうと分りましたので、英国のメーカーに直接注文して取り寄せました。 増幅管には71Aの採用が最初から決まっていましたのでこれはそのまま、 次いで送出しのトランスにUTCのLS−30というのが見つかりました。 これもテストしてみると上々の結果でした。回路も決まり前記のパーツを組合わせて 試作はひとまず成功しましたが、このあと少々厄介な問題が生じました。 I さんが某メーカー製アンプの写真を送ってこられて、こんなデザインでお願いしますということです。 見ると大きなレベルメーターが真中に陣取っており、いかにも現代風なデザインです。 さてこんなものが満足な工作機械もないうちで出来るのか? 一時はジャンク品の アンプでも買って来て、パネル部分だけ拝借なんてことも考えましたが、 さすがに手作り工房の沽券に関わります。他のアンプの作業の合間を縫って 何とか仕上げてみました。

 高さ180、幅435、奥行き330、メーター部分は220x80と かなり大きいですが、この部分を如何にまとめるかが最大の難問でした。

 前面パネルは3層構造になっており、一番奥の黒いメーター枠は アルミ材をフライスでくりぬき加工、化粧パネルも同様にして加工、 その間に4辺を45度カットした青ガラス色の8ミリ厚アクリルをはめ込みますが、こればかりは うちでどうにもなりませんので専門業者に外注しました。

 苦労した甲斐あって、ご覧のように明かりを落とした部屋では 何とも言えない雰囲気を醸し出してくれます。

 現代風な外観とはうらはらに、内部はトランスだらけ、使っている 増幅管も下の写真のようにヴィンテージものの71Aで、 見た目と内部のミスマッチは相当なものです。
右側の円筒形のもの二つがトランス式アッテネーターで、 組合わせるロータリースイッチにはセイデンの23接点 21NEG2-2-23を使用しました。
デザイン上入力セレクターが反対側に位置しますので、 今回はシールド線を多用しています。
一番手前にメーター照明用のLEDを並べていますが、 これは裏側から直接照らさずに一度ミラーで乱反射させて 光量が平均化するようにしています。

 71AはRCA Cunningham/Radiotron のダブルネーム刻印ものです。 ナス管も試してみましたがさすがにマイクロフォニックノイズが多く、 このアンプでは実用になりませんでした。

 リアパネルはシンプルそのもの、ライン入力3系統と 出力が2系統、あとはサービスコンセントのみです。

基本回路図

 基本回路はいつものCDバッファーと同じですが、 入力アッテネーターが先に述べたトランス式、増幅は直熱管の71A、 送出しがUTC LS−30と、バッファーアンプ用としては 馴染みの少ないものばかりです。 ことに入力アッテネーターがトランス式ということで、 信号経路に直列に入る抵抗は71Aのカソード抵抗だけとなり、 私自身が音質云々を評価する立場ではありませんが、 このことの意義は大きいと思います。機会があれば一度お試しください。
 なおこのバッファーアンプのゲインは71Aのμが3、 LS−30のレシオが3:1で、結果として0(増幅率1)となります。

トランス式入力アッテネーターの入手先は以下のとおりで、
価格は昨年の入手時で約200ポンド(ペア)でした。

E.A.SOWTER LTD.
The Boatyard, P.O.Box 36
Cullingham Road
IPSWICH IP1 2EL, England




基本性能

入力インピーダンス 12KΩ
(トランスですから直流抵抗は300Ω程ですが、
1KHzにおける実測インピーダンスは上記のとおりです)

出力インピーダンス  150Ω(実測値)

基準出力電圧  1V (最大出力24V)

歪率  0.05%以下(1KHz基準出力1V時)15Vまで1%以下

再生周波数帯域  9Hz〜25KHz (-1dB)

  チャンネルセパレーション 80dB以上(100Hz〜10KHz)

残留雑音 0.1mV以下(補正なし)15μV以下(JIS-A)
(VOL最大、入力端子1KΩ終端、出力100KΩ負荷にて測定)
S/N比 80dB以上(基準出力1Vに対し)


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