Valves' World 番外編その9
直熱管12A採用バッファーアンプ

以前 300Bシングルを作らせていただいた
川崎市のSさんから バッファーアンプの製作依頼でした。
増幅素子には直熱3極管、 送出しは良質のトランスを使った
低インピーダンス出力など、 繊細かつ重厚な音を求めて設計、
さらに見た目の楽しさを併せ持ったアンプにしてみました。

以前お作りした300Bシングルをそのまま小さくしたようなデザインです。

入力は4系統、うち一つはキャノン3P、
いずれも高品位パーツの採用です。

左側増幅部はシンプルですが、大型フィルムコン採用と
ノイズ対策で右半分電源部は やや窮屈になりました。
全体にインピーダンスの低い回路ですので、シールド線は一切使っていません。

基本回路図

12Aはμが8.5、内部抵抗約5KΩ、負荷10KΩで出力0.2Wという、 電圧増幅にはμが小さいし、
出力管としてはやや寂しい球ですが、 こういうラインアンプには頃合いの球だと思います。
ただし直熱管ですからノイズには敏感で、それなりの対策をとらないと 使い物になりません。
このアンプでもフィラメント点火は当初電源トランスの 6.3V巻線をブリッジ整流、
そのあと低ドロップの5V3端子レギュレーター (リップル除去率60dB)を 予定していましたが
フィラメントハムを除去しきれませんでしたので レギュレーターをLM317(リップル除去率80dB)に変更しました。
ただしこのLM317は入出力電圧差が3V以上必要ですので、急遽8Vx2の ヒータートランスを追加、
これでフィラメントハムは皆無になりました。 残ったノイズ0.3mVは12Aへの直接外来ノイズで、
シールドケースを装着すれば数十マイクロVのオーダーまで一気に下がりますが、
折角の12Aを眺める楽しみが奪われてしまいますし、このあとへ繋がる パワーアンプの
ゲインにもよりますが、一応実用レベルですので あえてシールドケースは採用しませんでした。
B電源の方はLCとRCの2段フィルターですが、電流は1本あたり6mAと少なく
リップルは完全に除去できています。なお2段目フィルターは 左右個別にして
出口のコンデンサーにはフィルムコンを採用、 クロストークと音質改善を目指しました。
出力端の2KΩは高域のピーク抑圧用で、これがないと100KHz付近に
盛り上がりが見られ、方形波観測でも盛大なリンギングが発生しています。



基本性能

入力インピーダンス  100KΩ
出力インピーダンス  600Ω
基準出力電圧  1V
ゲイン 5.1dB(1.8倍)
最大出力電圧 15V以上
歪率  0.1%以下(基準出力時1KHzにて)
再生周波数帯域  15Hz〜27KHz (-0.5dB)
  残留ノイズ 0.3mV以下(補正なし)
     

測定結果


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