VT52 並列給電SEPPアンプ 
モノラルx2


 おとなり韓国にお住まいのUさんからの依頼です。 VT52に憧れて、さる方に製作を依頼されておられましたが、 その時にVT52を二本使ったSRPPアンプを勧められ、 出力トランスを初めその他の部品を大部分お集めになられました。 ところがその方の事情で製作が中断、うちで何とかというご相談でした。 お集めになった部品を見てみると出力トランスはLUXのOY36で PP用、これを何とか活用したいと思いましたのでSEPPを提案、 前段は当初の予定通り102LによるSRPP、位相反転は 用意されていたUTCのA18を使うことで何とか設計してみました。

回路図

測定結果

ユーザーレポート


Front view 

 縦長デザインのシャーシとトランスなどの塗色はUさんのご提案どおりに仕上げました。 とくにトランスの色はご本人からカラースプレーをわざわざ送っていただきましたが、 今まで使ったことのない色でしたので助かりました。



Top view

 トランス類は出力が先に述べたOY−36−5、ドライバーにはUTC A18、 チョークはタムラで、電源は当初タムラのPC3004が用意されていましたが、 あまりにもオーバースペックですのでPH−100Sに変更してあります。


Rear view

 真空管はすべて落とし込み、電源部に使用のフィルムコンも 背が高いので、これも3分の1ほど沈めてあります。

  内部拡大写真は こちら

基本回路図


 回路は初段が102Lを使ったSRPP、これは当初から予定されていたものです。 出力段も同じくSRPPを採用、カップリングコンデンサーを介して OY36をドライブする回路のようでしたが、貴重なVT52を2本も使って 出力は1本分というのはあまりにも勿体ない話、出力トランスのOY36は 幸いにも1次巻線が分割されていますので、並列給電型のSEPPとして設計しなおしました。
 SEPPはOTLアンプなどでよく採用されていますが、その場合は 入力トランスを使うことが憚られますので、上下ドライブのアンバランスを補正するための 打ち消し回路の必要などで、複雑になることが避けられません。でも出力トランスを使う 今回のようなアンプでは、入力トランスも躊躇なく使えますから、 上下出力管に均等なドライブを与えることが出来、回路の単純化が可能となります。
 出力管はPP動作でありながら、出力信号はトランス1次側で磁気結合を必要としないシングル動作、 PPで問題になるトランジェント歪や、シングルのさいの直流磁化による低域特性の悪化など、 両者の欠点を克服できる回路です。 PPでもなくシングルでもない、別次元の音が楽しめます。  古くからある回路ですが、OTL用という先入観が強いためか、あまり普及しません。 もっと色々な球で試してみたい回路です。

測定結果

当工房のアンプはすべて詳細な測定を実施しております。
データで音がわかるわけでもありませんし、物理特性を 追求するアンプでもありませんが
お渡しするアンプの 健康状態だけは把握しておきたいと思っています。

基本性能

出力 5W 所要入力1700mV
    全高調波歪率 0.5%以下(1KHz 1W時)
再生周波数帯域 10Hz〜16KHz(−3dB)
ダンピングファクター 1.1
残留ノイズ 0.5mV以下(補正なし)

1台あたり
消費電力 60W
本体サイズ 180Wx525Dx190H
重さ 14Kg

  入出力特性

歪率特性

周波数特性

ユーザーレポート

ユーザーからのメールによる評価です。
(ご本人の許可を得て掲載しております)
 この度は本当にお世話になりました。 作って頂いたVT52 SEPP モノラルx2ですが、 やっと本腰を入れて聴けるようになりました。 素晴らしい音を堪能させて頂いております。

 2003年に高域用45アンプを作って頂いて以来、色々と直熱三極管の 情報を知る中でVT-52にもっとも興味をもつようになり、 ある方の勧めで部品と回路は前段WE 102L SRPP、 トランスドライバーにUTS A18、VT-52は変則SRPP、 出力トランスはラックスと提案頂、その他部品を色々と揃えました。 素人の上に韓国に居ながらの部品集めでしたので、 本当に苦労しました。

 今回昔の45アンプ作成頂いた縁を頼りに 山中さんにお伺いしたわけですが、 快くこれらの大物部品を活かして製作して頂き 感謝申し上げます。

 肝心の音の方は素晴らしいの一言です。 普通は組み合わせない部品や真空管構成の為、 周波数特性は16KHzで−3dBと現代としてはかなりナロウレンジで、 感度も1700mVとかなり低くなり、音を聴くまではとても 心配しました。

 しかし、そういったオーディオ的特性のハンディキャップを持ちながら、 聴かせてくれるその音は大変な音楽的説得力があり、 質感的にもとても満足出来るものでした。 ミニ300AといわれるWEのVT-52も確かに素晴らしいのですが 他の銘柄も気に入りました。特に無名の某メーカーのVT-52が 一番気に入りました。 これはアンプ自体の音楽性が素晴らしいから どの出力管でも魅力ある音楽を奏でてくれるのだと思います。 ナロウな部分は5年ほど前に作って頂いた 高域用45アンプを活用させて頂き、これで高域は70KHZ(−3dB)まで 伸びており、SACDにも十分対応出来ております。

 素晴らしいアンプを本当にありがとうございます。 やっと生涯つきあえるパワーアンプに巡り会えました。 心より感謝致します。 また、102LのSRPP等のアイデアで、このアンプ完成の きっかけをつくって下さったSさんにも 感謝したいと思います。

以上、ソウル在住Uさんからいただいたレポートでした。
 


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