838ダイナミックカップルドシングル
モノラルx2

当工房からあまり遠くない西宮市にある某お寺のご住職Uさんからの依頼で 作ってみました。
とにかく芯があってしっかりした音ということで 845あたりを検討されていたのですが、
こんな球もありますよということで 提案させていただいた838に決定しました。
なんとご住職はこのアンプを本堂の大広間で使われるそうです。

回路図

測定結果

ユーザーレポート

Front view
本体は左右対称でいつものカリン材ウッドケース仕上げです。
サイズは1台あたり420Wx280Dx270H

Top view

トランス類はタンゴで統一、うち出力トランスはX−10Sのコアに 3.5Kを巻いてもらった特注品、電源とチョークはカタログ品です。

Rear view

高圧電源部はすべて信頼性の高いフィルムコンで構成、左2本は いつも使っている東一の500V47+47μF、 右の黒いのはSHIZUKIのRUZコンで800V100μF

inside

内部拡大写真は こちら

中央が今回使用した838(United)左は845(Cetron) 右は211(GE)、写真で分かるように大きさや外観は ほとんど同じです。
838については こちらのPDFファイルを参照ください。

基本回路図


いつもどおりのダイナミックカップル回路です。
ご使用になるスピーカーシステムとの相性も考えると、 音質的にはNFBをしっかりかけて
ダンピングの効いたしまりのある音を 目指したかったので、2段増幅でゲインを稼いでいます。
初段と2段目は直結にすることも出来ますが、そうすると 電源を600Vから貰ってこないと
供給電圧が不足しますが、 かなり大掛かりになってしまいますので、
ブリッジのセンターから供給して、 通常のCR結合を採用しました。アンプ全体では
3段増幅NFB回路に なりますが、カップリング2箇所のスタガー比を充分大きく取り、
さらに微分・積分の両補正回路で安定化を図っています。
ドライバーEL34と出力管838はいつものようにダイナミックカップル、
グリッドバイアス28Vで838には135mAほど流していますので、 プレート入力は80W弱になります。
電源部は例によってコストはかかりますが直熱出力管に やさしい球と半導体のハイブリッド構成で
560V280mAをブリッジ整流 しています。 この場合得られるDC電流は55%の
約155mAとなりますが、 ちょうど全体をまかなえる数値です。
また、10Vのフィラメント電圧は5.2A 6.3V+3.8Vを利用することで
カタログ品のMX−280が使えるようになりました。

宍戸式イントラ反転トランス結合について
「Tossieさんは他の送信管アンプ以外ではトランス結合を 好んで採用されていますが、
送信管ではなぜダイナミックカップルばかりなのですか?」 という質問をよくいただきます。
折角ですからこの場をお借りして説明させていただきます。
個人的にはものすごく興味深い回路ですし、何度か自分で作ってみて その素晴らしさは体験済みです。
出来ればうちで作ってもっと普及させたいと思いながらも、 ここに詳しくは書けませんが、ある理由により、当工房のように
商品として発表するには 問題があるそうで、無用のトラブルを避けるため敢えて避けて通っています。
送信管アンプの発展にとって非常に残念なことですが、 これは決して故・宍戸先生の御遺志ではないと信じています。

測定結果

基本性能
ノンクリップ出力 30W 所要入力1000mV
全高調波歪率  1Wまで 0.3%以下 10W時 1%以下
再生周波数帯域 1W時 20Hz〜110KHz(−1dB)
        20W時 20Hz〜50KHz(−1dB)
ダンピングファクター 4.3 (20〜20KHz on-off 法)
残留ノイズ 0.7mV以下(8Ω端子にて入力1KΩショート 聴感補正なし)

  入出力特性

入力1000mV出力30Wまでリニア、その後40W超まで伸びてゆき、
宍戸先生がイントラ反転で実験された時とほぼ同じ結果を再現できています。

歪率特性

歪の出方は先生の場合とやや趣を異にするようで、
前段や回路方式の違いを考えれば当然の結果ですが、
出力10Wまでは1%以下を維持、その後も急激な増加はありません。

再生周波数帯域

出力増大につれて高域側が狭くなりますがそれでも20KHzはフラット領域、
低域側はコアボリュームたっぷりのトランスのおかげで低下はなく、 波形の崩れもみられません。

ユーザーレポート


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