VT52/275Aコンパチシングルアンプ 
モノラルx2


 岩手県盛岡市のTさんからこのアンプを含めて3台分のパーツをお預かりしたのは 昨年9月でした。このうち71Aシングルと6L6ppは 各々3ヶ月ペースで仕上げましたが、これが最後のアンプです。 「アンプは沢山持っているし、自分でも作っているので、急いでいる他の方のを 先に仕上げてあげてください」といわれ、ついその言葉に甘えてしまって 1年以上お待たせしてしまいました。

回路図

測定結果

ユーザーレポート


Front view

トランスをはじめ使用部品の大部分はTさんがコツコツ集められたもので、 中にはUSED品もありますが丁寧に保管されていたようです。


Top view

前方から


Top view

後方から
SP端子はいつもお使いのクラシックなネジ止め式で、 脱着が面倒かも知れませんがこういう古典アンプには相応しいスタイルですね。

Rear view

オイルコンの後ろに見えるスイッチは出力管VT52と275Aの 切替用で、フィラメント電圧とカソード抵抗を同時に切替えます。

VT52(左)と275A

プレートの形状や大きさなど良く似ていますが、仔細に見ると色々相違点もあります。

inside

内部拡大写真は こちら

基本回路図


 元々ご自身で製作する予定だったらしく、参考回路図として 手書きのものをいただいておりましたので、なるべくそれに沿った設計で進めました。 いわゆる古典アンプそのもので、ドライバートランスにはDCを流さない クラーフ方式です。結合コンデンサーの容量ひとつで低域をコントロール 出来ますので、こういう小出力の三極管アンプには相応しいと思います。
 浅野先生あたりの時代の方はこの辺のコンデンサーをとっかえひっかえしてよく遊んでいました。 ただその頃には今みたいにCR結合のシーンのカップリングコンデンサーで音がどうのこうのなんて 話はほとんどなかったですね。今の人ほど繊細な耳を持っていなかったのでしょうか? 決してそんなことはないですよね。コンデンサー交換のお遊びが、どうやら本質から 外れて一人歩きしているような気がしないでもないです。
 出力管の動作はVT52がいわゆる45並の動作、275Aは例によって WEにEp150VからMaxの300Vまで20種類くらいの 動作例が挙げられており、 出力も0.5Wから4Wくらいまであります。その中からVT52と共用という 制約を考慮して選んだのが上の回路図の電圧配分で、 出力はVT52で1.7W、275Aで1.5Wといったところに落ち着きました。
 275Aの時だけ整流管を効率の良い83Vに差し替えることで 250V50mAくらいの動作にすることも出来ますが、得られる出力増加分は1Wほど、 本来高能率のSP使用を前提にしたこのような小出力アンプでは、1Wが2Wになったところで 大勢に影響はありません。それより、より安全圏内で大事に使う方が得策でしょう。

測定結果

当工房のアンプはすべて詳細な測定を実施しております。
データで音がわかるわけでもありませんし、物理特性を 追求するアンプでもありませんが
お渡しするアンプの 健康状態だけは把握しておきたいと思っています。

基本性能

出力 1.7(1.5)W 所要入力220(240)mV( )内は275A
    全高調波歪率 1%以下(1KHz 1W時)
再生周波数帯域 15Hz〜18KHz(−3dB)
ダンピングファクター 1.3〜1.5
残留ノイズ 0.7mV以下(補正なし)
消費電力 40W
本体サイズ(1台あたり) 380Wx230Dx190H
重さ 10KG

  入出力特性

歪率特性

歪率特性

周波数特性

ユーザーレポート


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