EL34ppステレオ 
クォードタイプ


大阪・阿倍野区にお住まいのSさんからの依頼です。
回路構成・使用部品などはすべてお任せいただきましたので、
手持ちの中からトランス・真空管などを厳選、
回路構成も 今まであまり作例のないクォードタイプを採用してみました。

回路図

測定結果

ユーザーレポート


Front view

シンメトリーなレイアウト、花梨パネルを使った前面デザイン、 配色などはSさんのご要望にしたがって製作しました。


Top view

出力トランスはタムラ、電源はタンゴと混成ですが色はタムラに統一しました。


Top view

入力は三系統、SP出力は4,8,16Ω対応です。

Rear view


inside

上方中央のゴールドに輝く入力VOLがひときわ目立ちますが、 摺動式可変抵抗器としては最高の品質を誇るアルプス電気RK50です。
内部拡大写真は こちら

基本回路図


 プッシュプルアンプでは必須の位相反転回路ですが、今回はこの部分にも 拘ってみました。基本は英アコースティカル社の名アンプ クォードUを参考にしたもので、 いわゆる「スクリーングリッド結合型位相反転回路」と称されるものです。 この回路に関してはいろいろな方が考察されておられますので、 詳しくはそれらの解説を参照ください。
 本来EF86、KT66で構成されていますが、今回これらをC3g、EL34に それぞれ置き換えましたので、各定数のトリミングをおこない、オーバーオールの NFB量も少なめに設定しましたので、オリジナルに比べて入力感度も2倍ほど上がっています。 また出力管動作部分はオリジナルにない三接、ULの切替を付加しました。
 結果として真空管アンプとしてはかなりの低内部抵抗に仕上がり、 これだと高能率大型SPはもちろん、低能率かつインピーダンス変動および逆起電力の大きな今時の 小型現代SPも難なく駆動できます。
 なお出力管EL34は当工房秘蔵のお宝、30年以上前のTelefunkenオリジナルで、 この先大事に使っていただけるようプレート入力は20W未満と、 かなり控え目な動作ですし、高圧回路は倍電圧整流ですがダイオードを使わず、 半波整流管2本を使った真空管式にしてあります。

測定結果

当工房のアンプはすべて詳細な測定を実施しております。
データで音がわかるわけでもありませんし、物理特性を 追求するアンプでもありませんが
お渡しするアンプの 健康状態だけは把握しておきたいと思っています。

基本性能

出力 20W+20W 所要入力750mV(UL動作時)
   12W+12W 所要入力600mV(三接動作時)
全高調波歪率 0.1%以下(20Hz〜20KHz 1W時)
再生周波数帯域 10Hz〜50KHz(−1dB)
ダンピングファクター 20以上 
残留ノイズ 0.17mV(補正なし)0.03mV(JIS−A)
消費電力 145W
本体サイズ 390Wx315Dx240H
重さ 23KG

  入出力特性

歪率特性

歪率特性

周波数特性

ユーザーレポート

ユーザーからのメールによる評価です。
(ご本人の許可を得て掲載しております)
 【今までトランジスタアンプを長年使用してきて、それが壊れたのでこの際真空 管アンプに変えたいと考えていました。大メーカーのアンプも考えましたがどこ か手が出しにくく、真空管アンプについては全く素人ながらおもいきって、山中 さんにメールを差し上げたのは正解だったようです。すぐに懇切なご返事を頂 き、事前に工房へもおじゃまして、当方の好みの音楽ジャンルや音の感じをお伝 えしたところ、EL34ppアンプをとご提案頂きました。

 当方、EL34の真空管さえ初耳の入門者にはもったいないようなトランス、真空 管など第一級のものを使ったすばらしい作品を手にすることができ大変喜んでい ます。3ヶ月待った甲斐がありました。

 手許に届いて2週間くらいですが、毎日聴きこんできて、かなり耳にもなじんで きました。  音の感じを言葉にするのは難しいのですが、低音から中高音までとても滑らか で、たおやかな音質です。レンジ感は自然で不自然な誇張はなく、トランジスタ よりも自然な音がします。

 3管接続とUL接続が切り替えられるのですが、現在使用しているスピーカーで はそれほど大きな出力を必要としていないので3管接続が通常のポジションで す。ULにすると録音の良いCDなどでは明瞭に低音域が伸びます。また、UL の方が音場がわずかに3管より左右に広がる感じです。オリジナルのモノラルの LPなどでは、左右のスピーカーの真ん中に定位する感じが好ましいので3管が 良いですね。いずれに切り替えても聴感上の音量はそれ程変わらず、素直で滑ら かな音がします。  この特徴は無理に作った音といった印象はなく、いずれのポジションでも、ダン ピングファクターが良好で音場は、スピーカーの奥の方に広がり厚みを感じさせ てくれます。

 本などの解説では、海外製の高級真空管アンプでさえノイズが出やすいなどと いった評価も目にしていたので、気にしてましたが、まったく静寂そのもの。測 定数値をこれでもかといったほど並べ立てて品質を売りにする50万100万の トランジスタアンプとは、一線を画する最良の作品に仕上げてくださった山中さ ん、感謝しております。 本当にありがとうございました。】

以上、大阪・阿倍野区のSさんからいただいたレポートでした。


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