811Aダイナミックカップルド ダブルPP
バランス/アンバランス入力対応


 横浜市のSさんから、DynacoアンプのOPTや電源トランスがあるが、 これを使って811Aのプッシュプルアンプを作れないだろうかという ご相談でした。付加的なご希望としてはバランス入力対応として、 位相反転をUTC A20で行い、それ以降をプッシュプル回路で構成、 いわゆるダブルPP、さらにアンバランス入力にも対応できるよう インピーダンス変換のための入力バッファーを装備ということでした。

回路図

測定結果

ユーザーレポート


Front view 

 電源トランスやOPTの容量にやや不安はありましたが、 出力もさほど必要でないということでしたので、かなり定格を下げた 設計で挑戦してみました。


Top view

 後列両端がDynacoアンプから流用した電源トランスとOPT、 中程の小さいトランスは811Aのフィラメント用に追加したヒータートランスです。 真中の列は左から811A-CV345x2-811A-83の順で、 すべてS氏からの支給品です。 前列は左から入力、上がバランス用のキャノン、下はアンバランス用RCA、 共にATTを経てバランスは直接A20へ、アンバランスはCV4004を 使った入力バッファーでインピーダンス変換をしたのちA20へ繋がります。 A20で位相反転された信号は6188でPP増幅、CV345(12E1)を経て 811Aをドライブします。


Top view

 シャーシは今回、明るくて落ち着いた色というご要望でしたので、 一般的な塗装でなく、アルミ生地を生かした梨地仕上げにしてみました。 


Rear view

 


内部拡大写真は こちら
なお内部に使用の東京光音アッテネーター、 KSナンバーソケット、DALEの無誘導巻線抵抗、 ASCコンデンサーなどパーツのほとんどはS氏からの支給品です。

基本回路図


 回路構成は上で説明したとおりですが、CV345の扱いが意外と厄介でした。 まずGmが高くそのままでは発振に悩まされますが、これは入力グリッドとSG にパラ止めの抵抗を入れて解決。プレート供給電圧もかなり低く設定しないと 適正動作点に収まりません。電源トランスに低圧タップがあれば別電源としたいところですが、 それもかなわず、与えられたパーツの範囲内でで工夫するより仕方ありませんから、 ここはやむなく高抵抗でドロップさせています。

なお電源トランスはDynacoの回路から察するに、頑張っても180mAくらいが 限界だと予想されます。したがってドライブ段の30mA弱を差引いた残り150mA を使って、出力段811Aには各々75mAしか流していませんが、 このため出力は25W止まりとなっています。もう少し流せば30Wは出るでしょうが、 電源トランスの正確な容量が分らないので、安全策をとっています。

811Aの場合、無帰還ではDFが1以下となり音質上好ましくないので、 NFBは必要ですが、今までの経験から10dB前後が最適です。 今回も11.5dBのNFBですが、ドライブ段もPPですから クロスさせてかける必要があります。ところが 出力トランスがいつものタムラF2012のような NF専用巻線を持ったものでありませんので、4Ω端子をアースして 両側からかけるようにしています。

測定結果

当工房のアンプはすべて詳細な測定を実施しております。
データで音がわかるわけでもありませんし、物理特性を 追求するアンプでもありませんが
お渡しするアンプの 健康状態だけは把握しておきたいと思っています。

基本性能

出力 25W 所要入力 3V 
歪率  0.03%以下(1KHz1W時)
残留ノイズ 1.5mV 
周波数特性 18Hz〜40KHz(−1dB)
  ダンピングファクター 3.3

消費電力 185W
本体サイズ 445Wx325Dx230H
重さ 15Kg

  入出力特性

出力対歪率特性

周波数特性

ユーザーレポート


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