KT8/F2aコンパチPPステレオアンプ
出力管サブシャーシ換装式


 千葉県市原市のN氏からの依頼です。F2aPPまではお手持ちの球の都合もあり すんなりと決まりましたが、これと差し替えて楽しめるアンプをということで ご相談がありました。色々候補を挙げた中で、あまり知られていないKT8に 興味を示され、では例のサブシャーシ交換方式で作ってみましょうということになりました。

回路図

測定結果

ユーザーレポート



Front view 

 上の2枚の写真のように前列4本の出力管部分が サブシャーシになっており、この部分を載せ替えることで 2種類の出力管を楽しめます。
上がF2a、下がKT8です。


Front view 出力管サブシャーシ取り外し時

 以前初段ドライバー部分の載せ替えを作りましたが今回もそれと 同じ構造で、サブシャーシ換装と共にコネクターで本体とつながり、 面倒な切替スイッチや配線の繋ぎ替えはありません。



 各出力管は他方の影響を受けぬよう一本ごとに自己バイアス回路を備えています。 今回は三接とULの切替、バイアスチェックのための電圧検出回路なども 組み込みましたので接続ピンの数は両chで24本、これを ワンアクションで脱着できるようにするにはかなりの精度が必要でした。 また換装のさいには出力管の抜き差しを伴いますが、 頻度の多いことも考慮してソケットには信頼性の高い 金メッキピンテフロン製(山本音響工芸製)を採用しています。

  控選手のベンチも前回同様用意してあります。
KT8はあまり知られていない真空管ですが、6L6系の送信管タイプ、 807や350Aと良く似た規格で英国独自の球のようです。今回使用したものも GECブランドでした。


Rear view

 


 前列ツマミは左からLch入力VOL、サブシャーシ中央が三接/ULの切替、 Rch入力VOL、バイアスメーター切替(これは4本の出力管一本づつの電流値を 直読できるようになっています)そして右端が電源スイッチ。


 シャーシはいつものようにシャンペンゴールド、トランス類はN氏ご指定の色ですが、 色見本を見せていただいたとき頭に浮かんだのは昔乗っていたMiniの ブリティッシュ・グリーン、これなら大丈夫と思いました。


  内部拡大写真は こちら

基本回路図


 回路は入力段にインピーダンス変換のためのμフォロアーを設置、 あとは段間トランスによる全段PP、NFはF2012の専用巻線から ドライバーのカソードに戻しています。 各出力管動作はKT8の時が実効プレート電圧380V、カソード電流60mA、 F2aの時は390V、66mAとなっています。

測定結果

当工房のアンプはすべて詳細な測定を実施しております。 データで音がわかるわけでもありませんし、物理特性を 追求するアンプでもありませんが、お渡しするアンプの 健康状態だけは把握しておきたいと思っています。

基本性能

出力 
KT8 三接時 10W+10W 所要入力1600mV
KT8 UL時 20W+20W 所要入力2000mV
F2a 三接時 15W+15W 所要入力1900mV
F2a UL時 30W+30W 所要入力2400mV

全高調波歪率 1%以下(1KHz 10Wまで 各動作とも)
再生周波数帯域 20Hz〜30KHz(−1dB)
ダンピングファクター 2.7〜4.5
残留ノイズ 1mV以下(補正なし)

消費電力 200W
本体サイズ 525Wx375Dx230H
重さ 26KG

  入出力特性(左 KT8、右 F2a)

出力対歪率特性
(左 KT8 三接、右 同UL)

(左 F2a 三接、右 同UL)

周波数特性

ユーザーレポート

ユーザーからの評価です。
(ご本人の許可を得て掲載しております)
今回は写真のようにハガキ3枚に手書きされたレポートでした。
   アンプが到着して早速、会社の真空管愛好家の方々と試聴会を行いました。 私の転勤の関係で試聴会も最終回となり、皆の意気込みは 並々ならぬものがあり、あらゆるジャンルのCD数十枚を丸一日 かけて聴き込みました。

 その結果、大編成オーケストラやブラスバンドの演奏にはF2aが、 ジャズボーカルにはKT8が適しているということで皆の意見が一致しました。 F2aの持つ高分解能と華やかさを兼ね備えた音は特筆すべきもので、 オーケストラの各パートが如何にして一個の楽曲を構築しているかを 堪能することができます。

 KT8は歌手や演奏家の抑揚や息遣いの再現性に優れ。 離れがたい魅力を有した音を聴かせてくれます。 この球の能力が十分評価されてこなかったのが不思議でなりません。

 F2a/KT8はいずれもUL/3結の切替が可能なので、 いわば1台のアンプで4種類の音を楽しむことができます。 このような欲張りな機能と素晴らしい塗装・外観を兼ね備えた アンプを作成して下さいました工房の皆様に心より 御礼申し上げると共に、今後ますますのご清栄をお祈り申し上げます。

以上、Nさんからいただいたハガキ3枚にびっしり書かれたレポートと写真です。 この他にもNさんからは試聴会の模様やドイツ留学時の貴重な写真なども同封されていました。
(本文はハガキ文面をそのまま再現掲載しています)
 こうしてお客様に喜んでいただけることが、スタッフ一同なによりの励みになります。 こちらこそありがとうございました。


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