WE300Bシングルステレオアンプ 
前段コンパチ仕様


 過去にPX25やE406N、CDバッファーなどを作らせていただいている 山口県光市のKさんから、今度はWE300Bシングルのご依頼でしたが、 どこにもない変わったアンプということでお話しているうちに、夢はどんどん膨らんで 300Bをいろんな球でドライブできるアンプということになりました。 構成はすんなり決まりましたがそれをどうやって切替えるかが問題です。 球を差替え、スイッチを切替えてでは煩雑ですし、誤操作の危険もあります。 ここは手作りならではの腕のみせどころ、4本の真空管を並べたパネルごと 交換する方法の採用に決まりしましたが、信号や電源供給のコードを その都度いちいち繋ぐのはスマートではありませんから、 パル交換と同時にすべてが完了するよう コネクターも作ってしまいました。これで前段パネルを載せ替えるだけで 3つのパターンを安全手軽に楽しんでいただけます。

回路図

測定結果

ユーザーレポート


Front view WE仕様
 まずは本家WE御用達の310A−311Bスタイルです。 勿論300Bは80年もの、整流管も422Aをおごっています。  


Front view RCA仕様
 こちらはRCAの5693と6V6GTAでまとめてみました。
赤球の5693でがらっと雰囲気が明るくなります。 


Front view 欧州管仕様
 お次は欧州管仕様です。シーメンスの黒いC3gとGECのKT63採用で シックな感じです。


 桧舞台に立てるのは一組ですが、その間他の二組が休んでいただく控え室のベンチも用意しました。


Top view

 シャーシ後部3分の2は主役のWE300B出力部と電源部、出力トランスは 依頼者が某所で入手された稀代の逸品マリックMZT−83C16の未使用品、 段間はタンゴの大型ドライバートランスNC−20、電源トランスはME−225など 大型パーツが占めています。前方2個のメーターに挟まれた中央の部分が前段パネルで、 この部分を載せ替えます。


 前段パネルを取り外したところ。真中に見える7ピンコネクターが 手作り品、このおかげでパネル交換はワンアクションで完了です。  


Rear view
 電源部は2段チョークと高信頼フィルムコンの採用で、品位の高いB電圧を 長期間安定して供給可能としています。
(フィルムコンだから電解コンデンサーと違って音が良いなどといった表現は 陳腐で嫌いですが、高信頼・長寿命であることは確かです) 


   内部拡大写真とコネクター部アップ、3枚のパネルの様子などは こちら にあります。

基本回路図


 基本回路はいつものトランス結合300Bシングルアンプと同じで、 青・赤矢印部分で前段パネルの増幅部とコネクターでつながります。 それぞれの真空管の最適動作点はプレートやカソードの抵抗値を 適切に選ぶことで可能になります。ドライバー管の内部抵抗には バラツキが出ますが、NC−20の懐の広さのおかげですべてマッチングがとれました。
 さて、3種類の異なった真空管によるドライブはどのような変化として現れるのか、 皆さん最も関心のあるところでしょうが、結果として下の測定データにあるように 使用球のゲインの違いで生じる入力感度の差こそ出ますが、 歪率特性には大きな違いもなく、聴感上音質の顕著な違いは認められませんでした。 (私の耳はたいしてあてになりませんが、複数の試聴者の意見です)
 今回の場合、3つとも管種・回路などかなり似通った構成ですから当然の結果かも知れませんが、 言い換えれば300Bという球は適切なドライブをする限り、 いつでも音楽性豊かな表現力を発揮してくれるアンプになり得ることを、 はからずも証明してくれたようです。
 コネクターさえ作れば前段パネルはいくつでも出来ますから、次には まったく異なった回路構成なども試してみたいと思っていますが、供給電圧などが 限られていますのでかなり工夫が必要かも知れません。

 今回もお客様からご提案いただいた構想から、まさに世界でたった1台の アンプが誕生しました。皆様から提案いただくアイデアを形にしてゆくことは、 工房主としてなにより仕事の励みになりますし、手作り工房を名乗る以上 責務とも考えております。温めている夢、抱えている難問、 どしどしお寄せください。ご一緒に考えながら実現してゆきます。

測定結果

当工房のアンプはすべて詳細な測定を実施しております。
データで音がわかるわけでもありませんし、物理特性を 追求するアンプでもありませんが
お渡しするアンプの 健康状態だけは把握しておきたいと思っています。

基本性能

出力 8W+8W 所要入力 280(EU)700(RCA)1000(WE)mV
歪率 0.3%以下1KHz1W時
周波数特性 10Hz〜20KHz(−1dB)
ダンピングファクター 2.5 
残留ノイズ 1 mV以下 補正なし
消費電力 124W
本体サイズ 460Wx380Dx210H
重さ 25Kg

  入出力特性

入力感度の差はおもに初段管三接時のμ(C3g≒40,5693≒20,310A≒15)の違いによるものです。

出力対歪率特性

周波数特性

ユーザーレポート


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