KT88ダブルPush-Pull
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尼崎市のFさんからの依頼で、 以前お作りした アルテック型大出力NFBアンプから、
3極管接続・無帰還・ダブルPPへと、 より豊かな音楽性追求と高安定度を目指したアンプへの転身です。

回路図

測定結果

ユーザーレポート



Front view
ステレオ構成も体力的に移動が苦しい年代になってきたということで、 モノラル仕様2台となりました。

Top view

前作からの転用部品は出力トランスと出力管のみで、その他はすべて 新規調達としました。左端が今回の目玉、TKS84CDです。

Rear view

出力トランスは今回使用のタムラ電源とチョークにあわせて 再塗装してあります。

inside

内部拡大写真は こちら

回路図(増幅部は片チャンネル分のみ表示)


プッシュプルアンプで不可欠な位相反転回路として最も理想的な動作をするトランスですが、 もっぱら出力管手前のドライバー段で使用することが多いようです。 これを入力段に持ってきてアンプの回路を入力から出力まで すべてPPで構成するのがダブルPPで、NFBなど 不安定な要素に煩わされることなく低歪が得られます。 また反転トランス自体もより低レベルの位置での使用になりますから 特性の優れたものがメーカーとしても作りやすく、 位相反転を入力段で行うことのメリットは大きくなります。 ただ、最近はこういうアンプを作る方も少なく、対応する 入力トランスの入手が問題ですが、今回はタムラの TKS84CDという本来CDマッチング用のトランスを 探し出してきました。このトランスは最大使用レベル+23dBm、 周波数特性2Hz〜200KHz±1dBという入力トランスとして 使うには申し分のない性能を有しております。 ただ600Ω1:1ですのでこのパワーアンプにつながる入力機器のインピーダンスに 制約がありますが、幸い600Ω送り出しのプリアンプをお使いですので あえて採用してみました。 入力トランスで反転された正逆二つの信号はそのあと上下まったく同一条件の 2段アンプで増幅され、出力トランスで再び合成されますが、 この間ドライバーと出力管のあいだでは歪の打ち消し作用を伴いますので、 NFBの助けを借りることなく低歪アンプとなります。 なお、今回はゲインをあまり必要としませんでしたのでドライバーの C3gは三結で使っていますが、入力感度が不足する場合は 5結のままで使用も可能で、その場合はSGの電圧調整で 次段との歪打消しをよりきめ細かく調整することができるようになり、 小出力域での歪率改善も期待できます。 ただ、ゼロコンマ何パーセントかの歪率改善が音楽性を左右するかというと はなはだ疑問で、単に精神衛生上の問題という気がしないでもありません。 出力管KT88は多極管接続のままですと内部抵抗が高過ぎて ダンピングファクターの改善が出来ませんので3極管接続としています。 結果、出力はかなり減少しますが依頼者も最早大出力ではなく、 それよりもより高い音楽性と長期安定動作を望んでおられるので、 この点も障害とはなりませんでした。

測定結果

当工房のアンプはすべて詳細な測定を実施しております。
データで音がわかるわけでもありませんし、物理特性を 追求するアンプでもありませんが
お渡しするアンプの 健康状態だけは把握しておきたいと思っています。

基本性能
出力 15W 所要入力 2000mV
全高調波歪率 0.15%以下(1KHz1W時)
再生周波数帯域 18Hz〜20KHz(−1dB)
残留ノイズ 0.3mV以下(入力オープン・ショートとも補正なし)
ダンピングファクター 2.0

入出力特性

入力2Vで最大出力15Wと、感度は今までお作りした
他のアンプに合わせてやや低めに設定してあります。

歪率特性

再生周波数帯域

ユーザーレポート


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