手作り真空管アンプ工房



シャーシは薄いベージュのメタリック、トランスはブロンズ調、サイドウッドは アガチス材をチークオイルで仕上げと上品な茶系統でまとめてみました。
全体のレイアウトは浅野先生のアンプをモデルにしました。



左右に増幅部、中央が電源部と、いつもどおり3枚のパネルによる構成です。
出力管3C33はこの大きさの中に2A3二本分に相当する ユニットが封入されていますので発熱量はかなりあります。


一番奥の3C33が通称ジャンボドングリ、手間右の可愛らしい 球がWE717Aで、こちらはマッシュルームチューブと呼ばれています。 これほど3C33にピッタリな初段管はないと思います。
フェーズインバーターの14AF7は6SN7などと同じ規格ですが、 これも3C33に良く似合う球で浅野先生も使っていました。
3C33と14AF7はUnitedの商社ブランドですが、 メーカーはどちらもRCAです。717Aは管頭にプリントされていますが、 ブランドはWesternElectric、製造はTungsolとなっています。


とくに高級なパーツは使用していませんが、カップリングコンデンサーは ASC、カソードパスコンにはタンタルなど要所は押さえてあります。
出力トランスF782の銘板はシャーシに当たるため、カットせずに 本体とトランスの間に挟み込んであります。
電源トランスの両脇にあるVRはDCバランス調整用です。

回路図(増幅部は片チャンネル分のみ表示)と回路説明


とにかく717Aが 使ってみたかったのがこのアンプを作るキッカケでしたので、 とくに変わったところはありません。 初段717Aと位相反転管は直結カソード結合で、いわゆるムラード型です。 717Aの動作は6SJ7や5693と同じでピン配列も一緒ですので 差し替え可能です。出力管3C33は自己バイアスAB級動作になっていますが、 カソードが両ユニット共通ですのでカソード電圧を分圧して グリッドに加えDCバランスの調整を取ります。 出力トランスF782の場合、2つの巻き線のDCRがバランスしていますので 両プレート間の電位が0Vになるよう調整すればOKです。 整流管は最初5AR4を使う予定でしたが効率が良すぎてB電圧が 高過ぎ、3C33のプレート損失をわずかにオーバーしますので 5U4GBに変更しました。

測定データ

当工房のアンプはすべて詳細な測定を実施しております。
データで音がわかるわけでもありませんし、物理特性を 追求するアンプでもありませんが
お渡しするアンプの 健康状態だけは把握しておきたいと思っています。

入出力特性

波形がクリップするのは入力1100mV時でこの時点で 出力14.5W、歪率約4%です。

全高調波歪率

出力10Wくらいまでは歪率1%を切っています。
残留ノイズは120μV(Lch)160μV(Rch)となっており、 スピーカーからのハム音などは皆無です。

周波数特性およびダンピングファクター

低域側は10Hzまでフラット、高域は27KHzくらいから下降を始め、 240KHzあたりに小さなピークがあるものの素直に減衰しています。
ダンピングファクターは約5.7で3極管アンプとしては締まりのある音を聴かせてくれます。

方形波テスト

NFB量は12dBと多い方ではありませんが、念のため方形波テストで 発振の危険性などチェックしてみました。
写真左上からそれぞれ1KHz、10KHz、 下段は10KHz時に8Ω負荷と0.1μF(左)と 0.47μF(右)を並列接続というかなり厳しい条件ですが, わずかにリンギングが見られるものの発振に至るようなものではありません。



特別公開

当工房でのアンプの製作過程を写真で順を追って説明しました。 ぜひご覧ください。
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