845トランス結合シングルアンプ
直熱三極管45ドライブ

横浜のHさんから依頼の845アンプですが ドライバーはありきたりのものでなく
直熱三極管を 使って欲しいという提案でした。
ノイズ対策など工夫が必要でしたがなんとかクリア、
45独特の透明感ある繊細な音に力強さが加わって
自信を持ってお勧めできるアンプに仕上がりました。

回路図

測定結果

ユーザーレポート

Front view

オーソドックスな配列ですが、前列の5693と45は 落とし込みで845を引き立たせ、 好評のウッドケース仕立で個性を表現しました。

Top view

上面スペースは限度まで切り詰めて、大型送信管アンプでありながら 400x300というコンパクトサイズを実現しました。 ただし、総重量は36KGと一人で持ち上げるには限界の域に達しました。

Rear view

スピーカーアウトは要望で2系統装備、真ん中のスイッチでA/B 切り替えます。

Bottom view

底板は3mm厚アルミのパンチングメタルを使用、 内部には1KV近い高圧部もありますので万全を期しました。

inside

上面スペースを切り詰めたしわ寄せは内部に及んでいますが、 深さを使って立体的に組み上げてしのいでいます。

トリタン特有の輝きも魅力のひとつです。

基本回路図(増幅部は片チャンネル分のみ表示)



初段からドライバーまでは45のシングルアンプそのもので、
この回路でトランス2次側に150V以上のドライブ電圧を得ています。
45はこの動作条件で内部抵抗約1.5KΩですので、
NC−14を パラにしてちょうどマッチングがとれ、不要なピークなどは 生じていません。
2次側のシャント抵抗39KΩを省くと出力電圧はさらに稼げますが、 帯域は狭くなります。
出力段は例によって自己バイアス、実質Ep800V、Ip60mAで 約48Wの軽い動作です。

電源部回路図


高圧B電源は整流管による倍圧整流を採用、効率はやや悪いですが、
ダイオードのように 電源ONでいきなり高圧が出力管に印加されることなく、
球にやさしい設計です。
フィルター出口にはフィルムコンを採用 して長期安定性と音質改善に寄与しています。
通常の電解コン2段重ねよりは はるかに信頼性もあり、音質の面でも有利です。
増設したヒータートランスで45のDC点火用に安定化電源を組み込んでいますが、 これにより直熱管ドライブ、
さらに無帰還という悪条件にもかかわらず、 残留ノイズ1mV以下を達成しています。

測定データ

当工房のアンプはすべて詳細な測定を実施しております。
データで音がわかるわけでもありませんし、物理特性を 追求するアンプでもありませんが
お渡しするアンプの 健康状態だけは把握しておきたいと思っています。

入出力特性

無帰還アンプのためクリップは明確には現れてきませんが、 18Wほどで波形の頭がやや丸みをおびてきます。
この時点で歪率5%ですからこれを最大出力とみなしていいかと思います。
その後も入力を増すと21W位まで伸びます。

歪率特性

2Wくらいまでの歪率曲線は45シングルアンプそのものといっていいくらい 似ています。
実際に聴いてみても小音量時の音は45シングルの感じが 良く現れています。

再生周波数特性

典型的なトランスドライブアンプの特性で、いわゆるカマボコ型の 周波数特性ですが、
聴いてみてその帯域の狭さはまったく感じられません。
むしろ一つひとつの音に充実感が感じられ、
トランスドライブの 良さを再認識させられる音です。
ダンピングファクターは3.6となり、ほどよい値です。

ユーザーレポート

ユーザーからのメールによる評価です。
(ご本人の許可を得て掲載しております)

 その節はたいへん有難うございました。
おかげさまで845トランスドライブは快調に鳴っております。
スピーカーというよりも、むしろこの845アンプが鳴ってる感じで、 トランスドライブがつくりだす素晴らしさを感じずにはいられません。
このアンプを創造するにあたり、部品構成や、結合タイプで バルブス・ワールド様との打ち合わせでも、僅かの迷いもなかった こともよい結果になったと感じております。

・・・今ではすっかり4300Aプッシュプルも出番がありません。 私は、細かい音色のニュアンス等につきましてのコメントをする タイプではありませんので避けますが、こんな艶やかな雰囲気を 醸し出すアンプが求めるものでした・・・。


 匠の業を有難うございました。
こんな音の桃源郷へ導いてくれるアンプをまた創って頂ける日が やってくることを希望して止みません。  

以上、横浜市のHさんからのレポートと写真でした。
一緒に写っているのが、お話に出てきた4300A PPです。


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