RCA50 シングル ステレオ
直熱管71Aによるトランスドライブ

オークションに出品しておりました このRCA50アンプは
アクセス1500件と 好評の内に終了いたしました。
大勢のご参加どうもありがとうございました。
この場を借りて御礼申し上げます。
以下は出品時の説明文です。

長い間構想を暖めていましたが、受注作品の製作に追われ
完成が延び々になっておりましたが、ようやく出来上がりました。

米国を代表する直熱三極管と言えばあまりにも有名なWE300A/Bが ありますが、
その前身ともいえるRCA50こそ、知る人ぞ知る 銘球です。
WE300Aの出現に先立つこと5年、1928年に RCAにより開発された250は
その2年後1930年に252Aとして 改良されWEより発表されました。
その後275Aと発展し33年には 300Aが登場、 当時業務用機器の独占状態にあったWEが
300A/Bをもって、 業界を牛耳ることになり、
RCAは同年民生用として2A3を 送り出しました。
この年には250も現在のST19タイプの 50となっています。

50はグリッド電流が流れやすく通常のCR結合では 動作させることができません。
先人たちはトランスドライブや ロフチンホワイトなど工夫をかさねて使ってきましたが、
そうまでしても使ってみたい豪快な再生音が魅力の出力管でした。

なお、このアンプでドライバーに使用した71Aは
250のさらに2年前、 1926年にRCAより発売されたラジオ受信機用の終段管で、
その繊細な再生音は今もファンを魅了しています。
今回その50の底力と71Aの繊細さを融合させようと
目論んだアンプですが、 出てきた音はまさに図星、会心の作となりました。

惜しむらくはこの素晴らしいアンプを所有し続けるスペースも 財力もありません。
どうか心あるマニアのもとで繊細かつ豪快な音楽を 奏でて欲しいと思っております。
ご質問、ご相談などありましたら何なりとお申し付けください。

回路図

測定結果

ユーザーレポート

Front view

使用真空管は初段6C8G、ドライバー71A、出力段50、 整流管は81と6AX5ですべてRCAです。

本体サイズは420x320

Top view

出力トランスはハモンド1628SE、その他はインターステージ NC−10、電源MX−165、チョークMC−15−150Dと いづれも旧タンゴ製です。

Rear view

高圧整流部にはオイルコンとフィルムコンを採用。 出力端子は8Ωですが簡単な結線替えで4、16オームにも対応できます。

Bottom view


inside

ドライバー71A用のフィラメント安定化電源を組み込んだため やや込み合っていますが、他はシンプルな回路構成です。 右のラグ端子はSP出力端子のインピーダンス切り替えジャンパー。 50のソケットには信頼性の高いJhonsonタイプを採用しました。

基本回路図(増幅部は片チャンネル分のみ表示)



初段は6C8Gで後の6SL7や6SN7などの双三極管の前身ともいえる 球です。
これをSRPPで使用、高域特性の改善と低インピーダンス出力を 実現、次段の71Aにクリーンな信号を強力に送り込みます。
71AはEp180V、Ip12mAと出力管と電圧増幅管の 中間的な動作です。
これでインターステージ2次側に無歪120V以上の 出力が得られ、50を軽々とドライブすることができます。
50はグリッド電流の流れやすい球の代表みたいなものですが、 定石どおりのトランスドライブでその弊害から逃れています。
動作はEp430V、Ip55mAと規格よりやや内輪に抑えています。
電源部は高圧整流部に、かの浅野先生もあまりの整流効率の悪さで 使用を断念した81をあえて採用しました。
50からグリッドを抜いただけのようなそっくりの 姿態ですが、これほど50アンプにピッタリの整流管は、やはり 他にありません。
前段用の電源はトランスにヒーター電源が不足するため 通常はダイオードとするところですが、
カソード・ヒーター間が 高絶縁されている6AX5を使うことにより解決しました。
なお、このヒーター電源には6C8Gの上側ユニットのカソードが 90V前後となるため、
絶縁破壊防止として71Aのバイアス約37Vを 加えています。

測定データ

当工房のアンプはすべて詳細な測定を実施しております。
データで音がわかるわけでもありませんし、物理特性を 追求するアンプでもありませんが
お渡しするアンプの 健康状態だけは把握しておきたいと思っています。

入出力特性

このデータを採って驚いたのは、その凄まじいまでの消化力です。
定格の4.6Wを超えてもどんどんと入力を飲み込んで行き、 飽和しながらもついには3倍の15Wを超えてしまいます。
アンプ作りの先人たちが豪快な球と評した所以がここにあったと、 つくづく思い知らされました。

歪率特性

歪率特性も高中低域揃って見事なカーブを描いています。
なお、残留雑音は直熱管ドライブ無帰還アンプとしては 破格の1mV以下を達成しています。

周波数特性

1W時の出力範囲は−1dBで20Hzから20KHzをカバー しており、NC−10の優秀性が現れています。
40KHz辺りの山は1628SEの特性のようですが、これがこの出力トランスの 音を決めているともいえますし、
NFBアンプではないので弊害も ありませんからあえて補正はしていません。
ダンピングファクターは可聴帯域内ほぼ2.0でした。

ユーザーレポート

ユーザーからのメールによる評価です。
(ご本人の許可を得て掲載しております)
 30数年ぶりに自宅で聴くシングルアンプの音だなあと思いま した。やわらかく、落ち着く音質ですし、聴き飽きがしません 。

 大変堅牢なつくりで、常によいアンプづくりの目的意識を持っ てより合理的な構造設計を考えている。また、よいパーツ集め をしていると感じました。良いものを責任持って提供したいと いう気持ちが感じられました。自分のアンプとくらべ水準が高 いので、勉強になりました。シャーシー構造は、参考にさせて いただきたいと思います。

 また、シャーシー内部ですが、大きなアースラインとラグ、ソ ケットなどにに合理的にパーツを付けてあり、丁寧な配線をと ともに、合理性を感じました。

 現在私は、2A3PP(固定バイアス)で聴いていますが、ボ ーカルがとてもよいと感じられました。 大変良いンプと出会いましたので、長く使いたいと思います。 また、今後良いアンプを出されるのを期待しています。

システム
 スピーカー・・タンノイ(25年前)38センチ複合
 プリアンプ・・ラックスCL−35U
 ソース・・・・パソコン HDD内のmp3
音楽・・・ギター音楽(Armik,Esteban)ボーカル(Celine Dion,Sylvie Vartan,Jennifer Lopez)  

以上、福岡市のFさんからのレポートでした。


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