300Bパラシングル モノラルアンプ
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千葉県市川市の I さんからのご依頼は、
当初JBLのフルレンジ LE8Tを想定した小規模シングルアンプでしたが、
あらたに入手されたSonus FaberのGrand Piano Home
駆動するアンプとして急遽変更になりました。
音楽性豊かなSPシステムですが現代SPのご多聞にもれず、
能率が88dBと低いのがウィークポイントです。
そこで提案させていただいたのが、シングルアンプの長所を活かしつつ
パワー増大を目指したこの300Bパラシングルです。

回路図

測定結果

ユーザーレポート

Front view

モノラル構成とし、2台のアンプはそれぞれ左右対称の部品配置で仕上げました。 トランス類が大型ですので1台あたりの大きさは320Wx370D、 2台並べるとかなりの存在感があります。

Rear view

いつもどおり端子類は上面配置ですが、簡単に移動できない 重量級アンプでは便利です。

Top view

トランス類はすべてタンゴ製ですが、出力トランスのFW−150−2SR、 インターステージのNC−20などは同社全盛時の逸品です。

Side view

真空管が一列に並んだ横からの眺めも壮観です。

inside

内部拡大写真は こちら

基本回路図(増幅部は片チャンネル分のみ表示)




出力段の300Bパラレル使用は決定していましたが、 ドライバー段の決定に腐心しました。
91Bタイプのように310A一段でも数値的には 可能ですが、
さらに強力かつ音楽性の充実を求めて WEの小型出力管311Bの三結+トランス結合として、
300Bの持ち味を十二分に発揮させています。
例によってインターステージ2次側からの軽いNFBで 現代スピーカーにも対応できる広帯域化を実現、
アンプ自体の歪特性は出力管独自の2次歪だけを残したものとなっており、
いわゆる300Bらしさを堪能できるハイパワーアンプです。
同程度の出力はプッシュプル構成にすれば、コストもかけずに得られますが、
出てくる音は圧倒的に差があります。
やはりPPで300B独自の歪特性を打ち消してしまうことは
スペックの向上は図れますが、音楽性を重視した場合得策ではないようです。

測定データ

当工房のアンプはすべて詳細な測定を実施しております。
データで音がわかるわけでもありませんし、物理特性を 追求するアンプでもありませんが
お渡しするアンプの 健康状態だけは把握しておきたいと思っています。

入出力特性

入力420mV出力18Wあたりから波形の頭が丸くなり始めますが、
その後も出力は増え続け800mVで30W以上に達します。

歪率特性

いわゆるソフトディストーションタイプで、歪の内容も 聴感上有利な2次歪が主体です。

再生周波数帯域

インターステージに採用したNC−20はちょっとしたシングル用 出力トランスほどの大きさがありますが、
低域通過帯域18Hz (−2dB)と優秀なトランスでタンゴ全盛時の逸品です。
このトランスの採用でトランス結合アンプとは思えないほどの 広帯域アンプに仕上がりました。
ダンピングファクターは300Bの負荷が一本あたり4KΩの 設計ですから、
通常よりやや上がって3.2となり程よい値です。

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